「ヘルニアと言われたのですが、治りますか?」
これは、実際に当院でもお客様からいただくことのある質問です。
腰が痛くて整形外科を受診したところ、「椎間板ヘルニアですね」と診断された。
あるいは、腰だけでなく、お尻や脚にしびれがあり、検査でヘルニアが見つかった。
そのようなとき、
「一度ヘルニアになったら、もう元には戻らないのかな?」
「手術をしないと治らないのでしょうか?」
「整体に通えば、飛び出したヘルニアも治るんですか?」
「このまま痛みやしびれと付き合っていかなければならないのかな?」と、不安になる方もいらっしゃると思います。
特に、腰痛やしびれが長く続いていると、
仕事や家事だけでなく、旅行や趣味、家族と過ごす時間にも影響することがあります。
しかし、ここで知っていただきたいことがあります。
それは、椎間板ヘルニアと診断されたからといって、必ず手術が必要になるわけでも、一生痛みが続くと決まったわけでもないということです。
実際に、椎間板ヘルニアは手術をしなくても症状が軽減する場合があり、飛び出した椎間板の一部が自然に縮小・吸収されることもあります。
今回は、腰椎椎間板ヘルニアを中心に、
・身体の中で起こっていること
・自然に改善する可能性
・手術が必要となる場合
そして当院でお手伝いできることについて解説します。
1. 結論|椎間板ヘルニアは手術をしなくても改善する場合があります
まず結論からお伝えします。
腰椎椎間板ヘルニアは、手術をしなくても痛みやしびれなどの症状が改善する場合があります。
日本脊髄外科学会でも、腰椎椎間板ヘルニアは自然に改善する例もあり、
薬物療法や理学療法などの保存療法が基本になると説明されています。
ただし、ここで大切なのが、「治る」という言葉の意味です。
実は、ヘルニアが治るという言葉には、大きく分けて3つの意味があります。
| 「治る」の意味 | どのような状態? |
|---|---|
| 痛みやしびれが改善する | 日常生活で症状が気になりにくくなる |
| 飛び出したヘルニアが縮小する | 画像検査で突出した組織が小さくなっている |
| 身体の機能が回復する | 歩く、座る、仕事をするなどが楽になる |
この3つは、必ずしも同時に起こるわけではありません。
例えば、画像検査ではヘルニアが残っていても、痛みやしびれが軽減し、普段の生活を送れるようになる方がいます。
反対に、画像上ではヘルニアが縮小していても、症状が残る場合もあります。
つまり、ヘルニアの大きさだけでなく、今どのような症状があり、日常生活で何ができるのかを確認することが重要なのです。
2. そもそも椎間板ヘルニアとは?

まずは、椎間板ヘルニアの仕組みについて整理しましょう。
私たちの背骨は、「椎骨(ついこつ)」という骨が積み重なってできています。
そして、椎骨と椎骨の間には「椎間板(ついかんばん)」という組織があります。
椎間板は、背骨にかかる力を分散し、
身体を曲げたり伸ばしたりするときの動きに関係しています。
椎間板の中心には「髄核(ずいかく)」、
その周囲には「線維輪(せんいりん)」という組織があります。
椎間板ヘルニアとは、
この椎間板の一部が本来の位置から突出した状態です。
突出した組織が近くにある神経根などを圧迫したり、炎症を起こしたりすると、腰痛や脚の痛み、しびれなどが現れる場合があります。
例えば、腰椎椎間板ヘルニアでは、次のような症状がみられることがあります。
- 腰からお尻にかけての痛み
- 太ももやふくらはぎに広がる痛み
- 脚や足先のしびれ
- 前かがみや座る動作で強くなる痛み
- 脚に力が入りにくい感覚
ただし、これらの症状があるからといって、必ず椎間板ヘルニアであるとは限りません。
ほかの病気でも似た症状が現れるため、整形外科などでの診察が必要です。
3. ヘルニアがあっても痛くない人がいるのはなぜ?

ここで、少し不思議に思うことがあるかもしれません。
「椎間板が飛び出しているなら、必ず痛みが出るのでは?」
実は、そうとは限りません。
画像検査で椎間板の突出が確認されても、腰痛や脚の痛みを感じていない方もいます。
なぜなら、痛みは椎間板が突出しているかどうかだけで決まるものではないからです。
例えば、神経への圧迫や炎症の程度、神経の状態などが症状に関係する場合があります。
また、腰痛自体は、筋肉や関節、神経系の働き、生活習慣など、さまざまな要素が関係する症状でもあります。
そのため、MRIでヘルニアが見つかった場合でも、現在の痛みやしびれが本当にそのヘルニアによるものなのか、診察所見と照らし合わせて判断する必要があります。
画像にヘルニアがあることと、今感じている痛みの原因がヘルニアであることは、必ずしも同じではないということです。
4. 飛び出した椎間板は、自然に小さくなることがあるのでしょうか?

椎間板ヘルニアには、自然に縮小する場合があることが知られています。
これは、飛び出した椎間板の一部が、身体の免疫反応などを通して分解・吸収されることがあるためです。
私たちの身体には、不要な組織などを処理する働きがあります。
椎間板の組織が本来の位置から外へ突出すると、その周囲で炎症反応が起こり、マクロファージなどの免疫細胞が関与して突出した組織が分解・吸収される場合があります。
その結果、時間の経過とともにヘルニアが小さくなることがあるのです。
ただし、すべてのヘルニアが自然に吸収されるわけではありません。
ヘルニアの形や突出の程度、神経症状などによって、その経過は異なります。
また、自然に縮小する場合でも、その時期や症状の変化には個人差があります。
そのため、「ヘルニアはいずれ自然に治るから何もしなくてよい」と考えることは適切ではありません。
医学的な評価を受けながら、必要な治療や生活上の対応を選ぶことが大切です。
5. ヘルニアはどのくらいの期間で改善するのでしょうか?

「自然に改善することがあるのはわかったけれど、どのくらいかかるのでしょうか?」
このように気になる方も多いと思います。
腰椎椎間板ヘルニアによる脚の痛みなどは、
数週間から数か月の間に軽減する場合があります。
一方で、症状が長く続く方や、治療をしていても十分な改善が得られない方もいます。
また、痛みが先に軽くなり、しびれが後から残る場合もあります。
大切なのは、期間だけで判断しないことです。
例えば、最初は10分しか歩けなかった方が、以前より長く歩けるようになってきた。
座るとすぐに脚が痛くなっていた方が、少しずつ座っていられる時間が延びてきた。
こうした変化も、身体の状態を確認するうえで大切な情報です。
反対に、痛みが少し軽くなっていても、脚の筋力が低下している場合には注意が必要です。
痛みの強さだけでなく、しびれ、筋力、歩行能力なども含めて経過を確認することが重要です。
6. ヘルニアは手術しなければ治らないのでしょうか?
腰椎椎間板ヘルニアでは、
まず保存療法が検討されることが一般的です。
保存療法とは、手術を行わずに症状の軽減や身体機能の回復を目指す治療のことです。
例えば、薬物療法、必要に応じた注射療法、理学療法などが選択されます。
一方で、手術が必要になる場合もあります。
特に、脚の筋力低下が進行している場合や、適切な保存療法を行っても強い痛みや生活への支障が続く場合などには、手術が検討されます。
英国NICEのガイドラインでも、坐骨神経痛に対する保存的な治療で痛みや機能が改善せず、画像所見と症状が一致する場合には、手術による神経の圧迫解除を検討するとしています。
すぐに医療機関へ相談していただきたい症状

次のような症状が新たに現れた場合は、特に注意が必要です。
- 尿が出にくい、尿意がわかりにくい、尿や便を漏らしてしまう
- 股の間や肛門周囲の感覚が鈍くなる
- 脚に急に力が入らなくなる、筋力低下が進行する
- 両脚に強いしびれや痛みが広がる
こうした症状は、
馬尾症候群などの緊急性の高い状態が関係している可能性があります。
特に排尿・排便の異常や股の周囲の感覚低下が新たに現れた場合は、整体やセルフケアを行わず、直ちに救急医療機関を受診してください。
また、脚の筋力低下が急に起きた場合や進行している場合も、速やかな医療機関での評価が必要です。
「ヘルニアは自然に治ることがある」という情報だけで、受診を遅らせないようにしましょう。
7. ヘルニアの人は安静にした方がいい?それとも動いた方がいい?

「ヘルニアと言われたので、腰を動かさない方がいいと思っていました」
このように考えている方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、痛みが強い時期には、症状を悪化させる動作を一時的に控えることが必要な場合もあります。
しかし、長期間にわたって身体を動かさずにいることが、必ずしも良いわけではありません。
身体を動かす機会が極端に減ると、筋力や体力が低下し、日常生活での活動がさらに難しくなる可能性があります。
そのため、神経の状態や症状を医療機関で確認したうえで、無理のない範囲で活動を続けることが推奨されます。
英国NICEの腰痛・坐骨神経痛に関するガイドラインでも、本人の状態に合わせて普段の活動を続けることや、運動療法を検討することが示されています。
例えば、医師から活動を許可されている場合は、短い距離のウォーキングや、痛みを強めない範囲での軽い運動などが選択肢になります。
ただし、無理に前屈を繰り返したり、痛みを我慢して重いものを持ち上げたりする必要はありません。
特に、運動によって脚の痛みやしびれが強くなる場合は、負荷を減らして医療機関に相談することが大切です。
「安静にするか、運動するか」という二択ではなく、今の身体の状態に合わせて活動量を調整することが重要です。
8. ヘルニアの改善には、股関節や筋力も大切なのでしょうか?

ここからは、整体師としてお伝えしたい考え方です。
腰椎椎間板ヘルニアと診断された場合、医療機関で神経の状態や症状を確認することが最優先です。
そのうえで、日常生活を快適に過ごすためには、腰だけでなく、身体全体の動きや筋力を確認することも役立つ場合があります。
① 股関節の動き

私たちは、身体を前にかがめたり、しゃがんだりするとき、腰だけでなく股関節も使っています。
股関節の動きが制限されている場合、動作の仕方に影響することがあります。
ただし、股関節が硬いことが椎間板ヘルニアの直接的な原因になると断定することはできません。
股関節の可動域は、身体の動かし方を考えるための指標の一つです。
② 体幹や下半身の筋力

腰や骨盤の周辺には、身体を支えたり動かしたりする筋肉があります。
腹部や背部、股関節周辺の筋肉も、日常生活の動作に関係しています。
痛みが長く続き、身体を動かす機会が少なくなっている場合には、筋力や持久力の低下がみられることもあります。
そのため、必要に応じて筋力や動作能力を確認し、適切な運動を取り入れることが役立つ場合があります。
ただし、体幹を鍛えることで飛び出した椎間板を元の位置に戻せるわけではありません。
また、日本の腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドラインでも、運動療法の有効性については質の高い研究が十分ではなく、明確な推奨には至っていません。
運動はすべての人に同じように行うものではなく、身体機能の維持・改善を目指して個別に考える必要があります。
③ 日常生活での身体の使い方

腰に痛みや脚のしびれがある方の中には、長時間座ることや、前かがみの動作で症状が強くなる方もいます。
そのため、仕事中の座り方や休憩の取り方、荷物の持ち上げ方などを調整することが役立つ場合があります。
大切なのは、特定の姿勢を悪いと決めつけることではありません。
どのような動作で症状が強くなり、どのような方法なら身体を無理なく使えるのかを知ることが重要です。
9. ヘルニアは整体で治るのでしょうか?
ここは、特に正しく理解していただきたい部分です。
結論からお伝えすると、整体によって、飛び出した椎間板を元に戻したり、ヘルニアそのものを治したりできると断定することはできません。
椎間板ヘルニアは、神経への圧迫や炎症などが関係する医学的な病態です。
そのため、症状の評価や治療方針の判断は、整形外科などの医療機関で行う必要があります。
では、整体院では何もできないのかと言うと、
そのようなわけではありません。
医療機関での診断や治療を受け、整体による対応が適切と判断できる場合には、身体の動かしやすさや日常生活での負担を見直すサポートができる可能性があります。
例えば、医療機関での治療によって強い脚の痛みが落ち着いてきたものの、身体を動かすことに不安を感じている方の場合です。
そのような方に対して、身体の動きや筋力、生活習慣などを確認し、無理なく取り組める運動を考えていくことは、一つの選択肢になります。
ただし、強い神経症状がある場合や、症状が悪化している場合には、整体よりも医療機関での対応を優先します。
また、強い力で腰をひねったり、無理に背骨を矯正したりすることは、症状によっては適切でない場合があります。
当院では、ヘルニアを「押し戻す」「矯正して治す」といった説明は行いません。
医療による治療と、日常生活をより快適に送るための身体づくり。それぞれの役割を大切にしています。
10. 当院では「ヘルニアがあるか」だけでなく「今の身体で何ができるか」を大切にしています

当院が大切にしているのは、
身体の不調がある方に対して、現在の状態をできるだけわかりやすく整理することです。
例えば、ヘルニアと診断された方でも、困っていることは一人ひとり異なります。
「長時間座っていると脚が痛くなる」
「朝起きたときに腰がつらい」
「長く歩くと脚がしびれる」
「痛みは落ち着いたけれど、また悪くなるのが怖い」
こうした悩みに対して、症状だけでなく、生活の中で何が難しくなっているのかを確認します。
医療機関での診断や治療状況を踏まえたうえで、必要に応じて次のような項目を評価します。
- 腰や股関節の可動域
- 痛みが現れる動作や姿勢
- 立ち上がりや歩行などの動作
- 体幹や下半身の筋力
- 仕事や家事での身体への負担
- 睡眠や食事、運動などの生活習慣
- 日常生活でできること、難しいこと
こうした情報を整理することで、どのような動作に課題があり、どこから身体づくりを始めるとよいのかを一緒に考えます。
例えば、以前は10分程度しか歩けなかった方であれば、症状の状態を確認しながら、無理なく歩ける時間を少しずつ増やすことを目標にする場合があります。
また、仕事中に長時間座っていると腰がつらくなる方には、座る時間や休憩の取り方、身体の動かし方を見直すこともあります。
ここで目指しているのは、単に検査の数値を良くすることではありません。
自分の身体の状態を理解し、以前より安心して日常生活を送れるようになることです。
そして、身体に不調が現れたときにも、必要に応じて医療機関や専門家に相談し、自分に合った対応を選べるようになっていただきたいと考えています。
11. ヘルニアがあるからといって、好きなことを諦めないでください
ヘルニアと診断されたとき、不安になるのは痛みやしびれだけではないと思います。
「これからも普通に仕事ができるのだろうか」
「旅行で長い距離を歩くのは難しいのかな」
「子どもや孫を抱っこしても大丈夫なのかな」
「また痛くなるのが怖くて、身体を動かせない」
こうした不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、ヘルニアが見つかったからといって、これから先の生活がすべて決まるわけではありません。
適切な医学的評価や治療を受けながら、痛みやしびれが軽減し、日常生活でできることが増える可能性があります。
大切なのは、今の身体に必要な対応を知り、無理のない範囲で一歩ずつ取り組んでいくことです。
例えば、最初は近所を短時間歩くことから始め、身体の状態に合わせて活動量を増やしていく。
・仕事中の過ごし方を見直し、身体への負担を減らしていく。
・適切な運動を取り入れながら、日常生活を送るための体力を維持していく。
・そうした小さな積み重ねが、将来の生活を考えるうえで重要になります。
当院で大切にしているのは、ヘルニアという診断名だけを見ることではありません。
その方が、
・これからどのような生活を送りたいのか。
・家族とどのような時間を過ごしたいのか。
・どんなことを楽しめる身体でいたいのか。
その先にある人生です。
ヘルニアという診断名に必要以上に縛られず、今の身体を理解し、これからも自分らしく生活できる可能性を一緒に考えていきましょう。
12. まとめ|ヘルニアでも、症状が改善する可能性はあります
今回の内容を振り返ってみましょう。
- 腰椎椎間板ヘルニアは、手術をしなくても症状が改善する場合があります。
- 飛び出した椎間板の一部が、自然に縮小・吸収されることもあります。
- ヘルニアが画像上で残っていても、痛みやしびれが軽くなる場合があります。
- 強い神経症状や進行する筋力低下がある場合には、専門的な医学的評価が必要です。
- 身体の状態に合った運動や生活習慣の見直しが、日常生活の機能回復に役立つ場合があります。
- 整体はヘルニアそのものを治す医療に代わるものではありませんが、適切な範囲で身体づくりを支援できる可能性があります。
もし現在、
「ヘルニアと言われたけれど、これからどうすればいいかわからない」
「痛みは落ち着いたけれど、身体を動かすことが怖い」
「自分の身体に合った運動や生活習慣を知りたい」
「これからも家族と元気に過ごせる身体でいたい」
とお考えの方は、まず整形外科などで症状や神経の状態を確認することが大切です。
そのうえで、身体の使い方や筋力、生活習慣などについて相談したい方は、当院でもお手伝いできることがあります。
目指したいのは、ただヘルニアという診断名を気にしなくなることではなく、身体への不安を減らし、仕事や家族との時間、好きなことを安心して楽しめる毎日です。
その第一歩として、今の身体の状態を知ることから始めてみませんか?
