「肩こりがひどいのですが、運動した方がいいのでしょうか?」
これは、実際に整体院でもお客様からいただくことのある質問です。
肩がこったとき、皆さんはどのようなことをしていますか?
肩を揉んだり、ストレッチをしたり、温めたりしている方も多いのではないでしょうか。
なかには、肩こりを軽減するために運動を始めた方もいらっしゃると思います。
しかし、その一方で、
「肩がこっているのに運動をしたら、余計に疲れてしまうのでは?」
「肩こりは筋肉が硬くなっているのだから、ストレッチだけで十分なのでは?」
「筋トレをすると、肩がさらに硬くなりそう」
と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
実は、肩こりを考えるうえでは、筋肉をほぐすことだけでなく、筋肉を動かしたり、適切な負荷をかけたりすることも大切です。
ただし、すべての肩こりに同じ運動が適しているわけではありません。
今回は、肩こりと運動の関係から、運動が役立つ理由、自宅でできる方法、そして自分の身体に合った運動を選ぶためのポイントまで、わかりやすく解説します。
1. 結論|肩こりの改善に運動は役立つのでしょうか?

結論からお伝えすると、
肩こりや首・肩周辺の慢性的な痛みに対して、適切な運動は症状の軽減に役立つ可能性があります。
実際に、慢性的な首の痛みを持つデスクワーカーを対象とした研究では、首や肩、肩甲骨周辺の筋力トレーニングによって、痛みや日常生活への支障が軽減する可能性が報告されています。
2024年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、8件のランダム化比較試験を分析し、筋力トレーニングが慢性的な首の痛みや生活機能の改善に役立つ可能性が示されました。
ただし、研究全体のエビデンスの確実性は低く、すべての方に同じ効果が得られると断定できるものではありません。
ここで知っていただきたいのは、肩こりを感じている筋肉を、必ずしも休ませ続ける必要はないということです。
筋肉は身体を動かすだけでなく、頭や腕を支え、姿勢を保つ役割も担っています。
そのため、身体の状態に合わせて筋肉を動かしたり、筋力や持久力を高めたりすることが、肩への負担を考えるうえで重要になる場合があります。
ただし、肩こりの背景には、筋肉の問題以外にも頸椎や神経の病気などが隠れていることがあります。
また、強い痛みがある場合に無理な運動を行うと、症状が悪化する可能性もあります。大切なのは、ただ運動することではなく、今の身体に合った運動を選ぶことなのです。
2. 肩こりがあるのに、なぜ筋肉を動かすことが大切なの?
肩こりを感じているとき、多くの方は「筋肉が硬くなっているから、柔らかくしないといけない」と考えるのではないでしょうか。
もちろん、筋肉の緊張や不快感を和らげるために、ストレッチなどが役立つ場合もあります。
しかし、筋肉には柔軟性だけでなく、筋力や持久力も必要です。
① 筋肉は身体を支えるためにも働いている
私たちの首や肩には、頭や腕を支えるためのさまざまな筋肉があります。
例えば、
僧帽筋や肩甲挙筋、肩甲骨の動きを調整する前鋸筋などです。
これらの筋肉は、腕を動かしたり、姿勢を保ったりするときに働いています。
デスクワークでは、パソコンの画面を見ながら頭の位置を保ち、キーボードやマウスを操作します。
一見すると身体を動かしていないように感じるかもしれません。
しかし、筋肉は大きな動きをしていなくても、頭や腕の位置を維持するために働いています。
つまり、長時間のデスクワークでは、首や肩の筋肉に持続的な負担がかかる場合があるのです。
② 筋肉が疲れやすいことと、筋肉が硬いことは別の問題
ここで考えていただきたいことがあります。
例えば、
重たい荷物を長時間持ち続けていると、腕が疲れてきませんか?
これは、腕を支えるために筋肉が働き続けているからです。
では、その腕を揉めば、荷物を長時間持ち続けられるようになるでしょうか?
揉むことで一時的に楽になることはあるかもしれません。
しかし、筋力や持久力そのものを高めるには、適切な運動が必要になります。
首や肩でも、似たことが考えられます。
肩が硬く感じられるからといって、必ずしも筋肉の柔軟性だけが問題とは限りません。
筋肉の持久力、作業中の負荷、運動習慣、痛みへの敏感さなどが関係している場合もあります。
そのため、ストレッチだけでなく、筋力や持久力を高める運動が役立つことがあるのです。
3. 肩こりには「ほぐす運動」と「鍛える運動」のどちらが必要?

肩こりに対する運動を考えるとき、代表的なものとしてストレッチと筋力トレーニングがあります。どちらも身体にとって大切ですが、目的には違いがあります。
ストレッチ:筋肉や関節を動かし、柔軟性や動かしやすさを保つことを目指します。
筋力トレーニング:筋肉に適切な負荷をかけ、筋力や持久力を高めることを目指します。
例えば、
首を左右に動かしたときに動きにくさを感じる方は、無理のない可動域運動やストレッチが役立つ場合があります。
一方、長時間のパソコン作業で首や肩が疲れやすい方では、首・肩周辺の筋肉の持久力や筋力を高める運動が選択肢になります。
2018年に発表された、オフィスワーカーを対象とする27件のランダム化比較試験のシステマティックレビューでは、すでに首の痛みがある方に対する首・肩の筋力トレーニングや全身運動に、痛みを軽減する効果が認められました。
その中では、首や肩に特化した筋力トレーニングの方が、全身運動よりも大きな効果を示す傾向が報告されています。
ただし、これはストレッチが不要という意味ではありません。
身体の状態によっては、ストレッチと筋力トレーニングの両方を組み合わせることもあります。
重要なのは、「ほぐすか、鍛えるか」の二択ではなく、自分の身体に何が必要なのかを考えることです。
4. 肩こりがある人におすすめしたい3種類の運動
ここからは、
肩こりを感じている方が取り入れやすい運動を、目的別に紹介します。
初めて行う場合は、痛みやしびれがない範囲で、無理のない回数から始めてみましょう。
① 首や肩を動かす運動
最初に紹介するのは、首や肩をゆっくり動かす運動です。
長時間同じ姿勢で過ごしている方にとっては、身体を動かす機会を増やすきっかけになります。
おすすめの方法は、肩回しです。
- 背筋を無理なく伸ばして座ります。
- 両肩をゆっくり持ち上げます。
- 肩を後ろに回すように動かします。
- 力を抜いて肩を下ろします。
- 5〜10回程度を目安に繰り返します。
呼吸を止めず、首や肩に強い痛みが出ない範囲で行いましょう。
この運動の目的は、無理に筋肉を伸ばすことではなく、肩周辺を気持ちよく動かすことです。
② 肩甲骨周辺の筋肉を鍛える運動
次に紹介するのは、肩甲骨周辺の筋肉を使う運動です。
肩甲骨の周囲には、
僧帽筋や菱形筋、前鋸筋など、肩や腕の動きに関係する筋肉があります。
これらの筋肉は、肩甲骨の位置を調整し、腕を動かす際にも働いています。
例えば、ゴムバンドを使ったローイング運動があります。
- トレーニング用のゴムバンドを両手で持ちます。
- バンドを安全に固定するか、適切な方法で抵抗をかけます。
- 肩をすくめないように、肘をゆっくり後ろへ引きます。
- 肩甲骨が自然に動くことを意識します。
- ゆっくり元の位置へ戻します。
最初は軽い抵抗で8〜12回程度を目安に行い、無理のない範囲で始めましょう。
バンドを固定するときは、外れたり切れたりしないよう注意してください。
この運動では、ただ肩甲骨を強く寄せるのではなく、肩や腕を滑らかに動かすことを意識します。
なお、首や肩の筋力トレーニングが症状軽減に役立つ可能性はありますが、この種目だけで肩こりが改善すると確認されたわけではありません。
③ ウォーキングなどの全身運動
肩こりへの対策として、意外に感じられるかもしれませんが、全身を動かすことも選択肢の一つです。
例えば、
ウォーキングや軽い有酸素運動です。
これらの運動では、下半身だけでなく、腕や体幹なども使いながら身体を動かします。
また、全身運動には体力の維持・向上や健康増進などの効果が期待できます。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、
成人に対して、今より少しでも多く身体を動かすことや、筋力トレーニングを週2〜3日行うことが推奨されています。
ただし、これは肩こりだけを対象とした運動基準ではありません。
まずは10分程度の散歩など、
自分が無理なく続けられる活動から始めることをおすすめします。
5. 肩こりに運動を取り入れるとき、気をつけたいこと

運動は肩こりの軽減に役立つ可能性がありますが、やり方を間違えると症状が強くなる場合もあります。
特に、次の3つに注意しましょう。
① 痛みを我慢して運動しない
「痛いくらい伸ばした方が効く」と考えて、無理に首や肩を伸ばしていませんか?
強い痛みを我慢しながら行う必要はありません。
運動で痛みが明らかに強くなる場合や、運動後も悪化が続く場合は、負荷を減らすか運動を中止し、専門家に相談しましょう。
② いきなり強い負荷をかけない
普段あまり運動していない方が、突然重たいダンベルを使ったり、長時間トレーニングを続けたりすると、筋肉や関節に大きな負担がかかることがあります。
最初は軽い運動から始め、身体の反応を確認しながら少しずつ負荷を調整することが重要です。
③ すべての肩こりを運動不足だと決めつけない
肩こりの背景には、頸椎や神経の病気、肩関節の疾患などが関係していることがあります。
手や腕のしびれ、筋力の低下、進行する痛みがある場合は、運動だけで対処しようとせず、整形外科などで相談してください。
特に、突然の激しい頭痛や首の痛み、麻痺、胸痛や息苦しさなどを伴う場合は、速やかな救急受診が必要です。
6. 肩こりには、どれくらいの頻度で運動すればよいのでしょうか?
「運動が大切なのはわかったけれど、毎日やらないといけないのですか?」
このように感じた方もいらっしゃるかもしれません。
結論からお伝えすると、毎日ハードな運動をする必要はありません。
重要なのは、身体の状態に合った運動を無理なく継続することです。
例えば、
運動習慣のない方は、次のような方法から始めることもできます。
| 運動の種類 | 頻度の目安 | 目的 |
|---|---|---|
| 肩回し・軽い可動域運動 | 1日1〜3回 | 身体を動かす機会を増やす |
| 肩甲骨周辺の筋力トレーニング | 週2〜3日 | 筋力・持久力の向上 |
| ウォーキング | できる日から | 活動量・全身持久力の向上 |
| デスクワーク中の休憩 | こまめに | 同じ姿勢が続くことを避ける |
一般的な導入例であり、肩こり改善に最適な頻度を保証するものではありません。症状、年齢、体力、持病などに応じて調整してください。
運動の効果を考える際には、1回の運動で肩が軽くなるかどうかだけでなく、数週間単位で日常生活の負担がどのように変化しているかを確認することも大切です。
例えば、
以前は30分のパソコン作業で肩がつらくなっていた方が、以前より長く快適に作業できるようになったとしたら、それも身体の変化の一つと考えられます。
ただし、変化の現れ方には個人差があるため、改善がみられない場合は、運動内容や症状の原因について再評価する必要があります。
7. 自分にはどの運動が必要?身体の状態を振り返ってみましょう
ここまで読んでいただいた方の中には、
「自分はストレッチと筋トレのどちらをした方がいいのだろう?」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、まずは普段の身体の状態を振り返ってみましょう。
肩こりと運動のセルフチェック
・首を左右に動かしたとき、動きにくさを感じる
・長時間座っていると肩が重くなる
・肩や腕を動かすとすぐに疲れてしまう
・日常的に運動する習慣がほとんどない
・ストレッチをすると一時的に楽になるが、すぐに戻る
・肩こりによって仕事や家事に支障を感じる
ここで知っていただきたいのは、同じ「肩こり」という症状でも、必要な対応が人によって異なるということです。
首の可動域に制限がある場合と、
筋肉の持久力が不足している場合では、運動の目的も変わってきます。
また、身体の動きに大きな問題がなくても、
睡眠不足や仕事中のストレスなどが症状に関係している場合もあります。
そのため、自分に何が必要なのかを知ることが、運動を始めるうえで大切な第一歩です。
8. 当院が大切にしているのは、ただ運動を教えることではありません

肩こりの改善を考えたとき、ストレッチや筋力トレーニングは選択肢の一つです。
しかし、当院が大切にしているのは、単に運動の方法をお伝えすることではありません。
「なぜその運動が必要なのか」「どのような身体の変化を目指しているのか」を、
ご本人にも理解していただくことです。
例えば、
肩こりでお悩みの方に対して、必要に応じて次のような点を確認します。
- 首や肩の可動域と、動かしたときの症状
- 肩甲骨や胸椎の動き
- 首や肩周辺の筋肉の働き方
- 筋力や持久力に関する指標
- 仕事や家事など、日常生活での身体の使い方
- 睡眠、栄養、身体活動などの生活習慣
こうした評価を通して、現在の身体にどのような課題が考えられるのかを整理します。
例えば、
首の動きが制限されている方と、長時間の作業で肩が疲れやすい方では、運動の内容や負荷が異なる場合があります。
また、身体の状態によっては、施術を通して一時的に痛みや動かしにくさを和らげることを目指す場合もあります。
ただし、施術だけですべての問題が解決するわけではありません。
そのため、必要に応じて、自宅や職場でも取り組める運動や生活習慣の見直しをお伝えします。
ここで当院が目指しているのは、整体院に通い続けなければ身体を維持できない状態ではありません。
自分の身体の状態を理解し、
不調を感じたときに適切な対処を選べるようになることです。
身体の変化を一緒に確認しながら、ご自身でも健康を維持する力を身につけていただくこと。
これが、当院が施術とともに運動や生活習慣のサポートを大切にしている理由です。
9. 肩こりを我慢する毎日から、好きなことを楽しめる毎日へ

肩こりでお悩みの方に、もう一つ考えていただきたいことがあります。
それは、肩こりが軽くなった先に、どのような生活を送りたいのかということです。
例えば、
「仕事が終わる頃には肩がつらくて、何もしたくない」
「休日も疲れが残っていて、家族と出かける元気がない」
「肩こりが気になって、好きなことに集中できない」
と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
もし、肩こりへの不安が少なくなり、身体を今より快適に動かせるようになったら、どのようなことをしたいですか?
仕事が終わったあとも、家族との会話や食事を楽しむ。
休日には、好きな場所へ出かける。
新しい趣味やスポーツに挑戦してみる。
そんな毎日を想像してみてください。
当院で目指しているのは、
単に肩こりを一時的に和らげることだけではありません。
身体の状態を理解し、自分でできることを増やしながら、
これから先もやりたいことを楽しめる身体づくりをすることです。
肩こりがあるからといって、
好きなことを諦めなければならないとは限りません。
自分の身体に合った方法で少しずつ身体を動かし、必要に応じて専門家のサポートを受けることで、日常生活がより快適になる可能性があります。
そして、自分自身が健康について考え、行動することは、家族と一緒に身体を動かしたり、健康的な生活習慣を共有したりするきっかけにもなります。
肩こりを我慢して過ごす毎日から、自分の身体を理解し、家族との時間や好きなことを楽しめる毎日へ。
その第一歩として、今の身体に合った運動を考えてみませんか?
10. まとめ|肩こりに必要なのは、ただ運動することではありません
今回の内容を振り返ってみましょう。
- 肩こりや慢性的な首・肩の痛みに対して、適切な運動は症状の軽減に役立つ可能性があります。
- 筋肉には柔軟性だけでなく、筋力や持久力も必要です。
- ストレッチと筋力トレーニングには異なる目的があり、身体の状態に応じた選択が大切です。
- 運動は無理のない負荷から始め、継続することが重要です。
- 肩こりの背景には複数の要因があるため、運動だけですべてを解決できるわけではありません。
もし現在、
「肩を揉んでもすぐにこってしまう」
「ストレッチをしているけれど、あまり変化を感じない」
「自分にはどのような運動が必要なのかわからない」
「仕事や家事を、もっと楽にこなせる身体になりたい」
と感じている方は、
当院へ身体の状態や日常生活での負担についてご相談ください。
当院では、身体の動きや筋肉の働き方を確認しながら、一人ひとりの状態に合わせた施術や運動、生活習慣の見直しをサポートしています。
大切なのは、肩こりを我慢し続けることでも、ただやみくもに運動することでもありません。
自分の身体を知り、今の自分に必要なことを見つけていくことです。
これからも安心して仕事や家事に取り組み、家族との時間や自分の好きなことを楽しめる身体づくりを、一緒に考えていきましょう。

